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2018年02月04日

みきちゃんの医療独り言ー看護の個別化(!?)



みきちゃんの医療独り言ー看護の個別化(!?)一

病院に入院すると決められたいろいろな規則に縛られることになる。入院するとまず入院着(患者着)に着替えさせられる。これでもう一端の患者の気分にさせられる。どうして皆同じ囚人服のようなださいものを着なきゃならないんだろう。お洒落でカラフルなパジャマや寝間着だったら目の保養になり、楽しいと思うのだが。
寝坊助けの私には朝早く検温で起こされるのが辛かった。だいたいなぜ皆が計らなければいけないのか。診療に是非必要な人、期間だけで良いのではないか。
看護業務を手っ取り早くスムースにこなすには皆一様なのが良い、ということなんだろうね。食事をチョイスできたり、さしつかえない人にはお酒を許したり(東京の某私立医大ではやっている所があるようです)迄は望めないけれど、患者さんへの規則や制約はできるだけ少なくしてほしいと思う。これって看護の個別化?。

                                     (文 篠原みきお)

  

Posted by みきちゃん at 21:03
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2018年01月22日

がん最新情報ⅩⅦ 乳がん術後の遺伝子検査の意義



がん最新情報ⅩⅦ 乳がん術後の遺伝子検査の意義

術後に化学療法を行うかどうかは、腫瘍の大きさ、リンパ節転移の有無、数を元にしたステージ分類(0~Ⅳ期)に加えて、最近は個人個人のがんの生物学的特性を考慮した個別化治療が主流になっています。

emoji33病理検査による治療法の選択
日常の実診療では、エステロゲンリセプター(ER)、プロゲステロンリセプター(PgR)、HER2、Ki67、の結果により分類されたものを基本に選択されます。(前回ⅩⅥ「治療法決定に必要な情報」参照)

  表ー1 実臨床に用いられる分類と治療法の選択        ( St.Gallen乳癌国際会議、2011年)
              ER PgR HER2 Ki67         治療法
Luminal A      +  +   -  低値(〈14% ?)   内分泌治療

Luminal B      +   ±    - 高値(〉20~30% ?)内分泌治療
                                        化学療法

Luminal B      +   ±   +                 内分泌治療   
                                         化学療法
                                         分子標的治療
                                        (抗HER2薬)

HER2-enriched  ー  -   +                化学療法                                                                                  分子標的治療                                       
                                                                  
Basal-like      -   -   -                化学療法

これによると、A以外では化学療法が必要とされます。ただ、Ki67の低値、高値を何%とするか確定していないので、AかBかの判断は各医師に委ねられています。 

emoji33多重遺伝子解析
この検査の目的は、早期乳がんの予後の予測と術後化学療法の選択です。日本で可能なのは3種類です。検体はいずれも切除されたがん組織ですので、検査の申し込みは主治医にしなければなりません。又、保険適用ではないので費用は自己負担です。

           表ー2 各種遺伝子解析の比較
検査名       解析遺伝子数     適応          リスク判定
OncotypeDX      21    ステージⅠ~Ⅲ(T3N1)  低リスク
(オンコタイプDX)          ER+              中間リスク
                                       高リスク

MammaPrint      70    ステージⅠ~Ⅱ        低リスク
(マンマプリント)           大きさ5cm以下        高リスク
                      ER+、-                              
                      リンパ転移0~3個

95GCBreast      95     ER+              低リスク
(95GCブレスト)           リンパ転移0          高リスク

☆オンコタイプDX
 ER陽性の患者さんがホルモン療法を5年間受けると想定した場合の10年間の再発リスクを評価します。再発スコア(RS)は0から100の数値として計算されます。0~17低リスク、18~31中間リスク、32~100高リスクと判定します。又、化学療法の効果も予測します。(低リスクは効果殆どなし、高リスクは大いにあり。)
1万人の早期がん患者でRS0~10の5年間の遠隔再発率は1%未満でした。(欧州臨床腫瘍学会2015年) 3100人の低リスク患者のドイツの試験では、5年生存率99%でした。(52回米国臨床腫瘍学会2016年)
これらの結果をみると、低リスクでは化学療法を回避できる可能性が高いと思われます。日本では年間約1000件行われています。費用は約36万円です。
☆マンマプリント
 ER+でもーでも検査可能です。
臨床的に再発高リスクでマンマプリント低リスク群(A群1550人)と、臨床的低リスクでマンマプリント高リスク群(B群592人)の5年無転移生存率を比較した研究があります。A群中化学療法施行例は96.2%、未施行94.7%でわずか1.5%の差でした。B群中化学療法施行例95.9%、未施行例95.0%で有意差はありませんでした。著者は「従来の臨床的高リスク3356例の内化学療法は46%減少した。マンマプリントによって術後多くの患者が便益の少ない治療を避けられる。」としています。(NEJM2016年8月)
しかしこの検査意義に疑問の意見もあります。「臨床的低リスクでマンマプリント高リスク群で化学療法を行うメリットが示されていない。」「5年の結果では不十分。」「10年後に生存率1.5%の差が維持されるか見極める必要がある。」がその理由です。(CIWorks大野2016年11月、岩田同12月)
☆95GCブレスト
 日本で開発され、国内で検査できます。オンコタイプの中間リスクも低リスク、高リスクに分類可能です。(詳細はWebサイト「シスメックス」から「Curebest 95GCBreastって何?」検索)

emoji33できれば受けたい検査ですが・・・・・
表ー1のAでも、オンコタイプDXが中間リスク以上(RS25以上)、マンマプリント高リスク、悪性度3、リンパ転移4個以上の例は化学療法の追加を考慮してもよいとされています。
治療に迷ったときは遺伝子検査を受けて、予後や薬の効果を知って納得して選択したいものです。一時の出費を惜んで後悔するのは避けたいですね。早く保険適用になって必要な人が気楽に受けられるようになることを願っています。
                    
                                     (文責 篠原)




  
 


  

Posted by みきちゃん at 15:53
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2018年01月11日

がん最新情報ⅩⅥ 乳がん術後の化学療法


がん最新情報ⅩⅥ 乳がん術後の化学療法

乳がんの手術後に化学療法(抗癌剤治療)を行うかどうかは、患者さん個々のいろいろな状態や因子で判断されます。早期乳がん(ステージ0、Ⅰ、Ⅱ期)では患者さんの希望も含めて検討されなければなりません
emoji33治療法決定に必要な因子
日本乳癌学会の「乳がん診療ガイドライン(2014年)」では次の項目をあげています。
①腫瘍の大きさ(リンパ節転移なければ5cm以上でもⅡ)
②腋窩リンパ節転移の有無(有でも大きさ2~5cmでⅡ)
③がんの悪性度(グレード1~3、3は悪性度高い)
④増殖指数(Ki67*1)
⑤ホルモン受容体(エストロゲン、プロゲステロン受容体)
⑥HER2タンパク発現*2
⑦他臓器への転移の有無
これらの内多く(①~⑥)は切除されたがんの病理組織検査で判ります。

*1 Ki67 細胞核に多くみられるタンパク質で、増殖能を示す指標。高いほど悪性度高いが抗癌剤が効きやすい。基準はまだ確定されていないが、14%以下で低値、30%以上は高値で化学療法の適応とするのが一般的。
*2 HER2 乳がんの約20%で陽性。従来陽性は予後が悪かったが、分子標的薬(ハーセプチン等)の登場で陰性より良くなった
。(J.Clin.Oncol.28,2010)

emoji33早期乳がん患者で化学療法を受けない人が増加している
米で早期乳がん2926人を対象にした調査では、化学療法を受けた人は2013年の34.5%から2015年は21.3%に減少していました。
「化学療法の有害性が有益性を上回る場合がある事が認識されるようになったのが一因」と述べています
。(J.of the National cancer Institude ,2017 12)

emoji33代替医療の利用と死亡リスクの上昇
タレントの小林麻央さんが乳がんで亡くなったことはツイッターと共にマスコミで大きく報道されました。彼女は乳がんと診断された後標準治療を受けないで、かなりの期間民間療法(温熱療法)を行っていた為に治癒する可能性を無くしたようです。
米では患者や家族の代替医療への関心が高まっています。2006年~2010年の早期乳がん685人の調査では87%の人が何らかの代替医療を利用していました。
代替医療は、ビタミンやミネラル、ハーブ等の植物製品、心身の自己鍛錬(ヨガ、瞑想)、鍼治療などでした。
しかし、代替医療だけでは死亡リスクが高いとする報告があります。2004年~2013年の840例のがん(乳腺、肺、大腸、前立腺)で、代替医療だけ280例と標準治療560例の死亡リスクを調べた結果です。全死亡のハザ^ード比は2.5倍で、特に乳がんは代替医療だけの死亡リスクが5.68倍とかなり高値でした。
(JNCI 2017 8)
代替医療だけに頼るのはリスクを十分考慮する必要がありそうです。

emoji33病理検査をしっかり受けて、医師とよく相談する事が必要
化学療法の併用で予後が良いとしても、副作用を恐れて躊躇する人は少なくないでしょう。どれだけ効果があるのか疑問を持ちながら受ける人も多いと思います。まずは病理検査をしっかりやってもらって、結果を元に主治医とよく相談しましょう。
ホルモン療法を行うかどうかの指標になるホルモン受容体やHER2は今は黙っていても検査してくれるでしょう。Ki67も大事ですから調べてもらいましょう。
次回は、化学療法を行った方が良いかの判断材料になる、予後、再発リスクを予測する遺伝子検査について記したいと思います。
                                     (文責 篠原)





  

Posted by みきちゃん at 15:37
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2017年12月18日

みきちゃんの医療独り言ー病院の理念の建前と本音ー



みきちゃんの医療独り言ー病院の理念の建前と本音ー
昨今、病院は理念、基本方針なるものを掲げて公表している。いわく、「患者さま中心の医療を実践」「患者さんを主体として」「患者さんの意思を尊重」等々。
私が大腸がんで入院、手術を受けた経験も踏まえて、現在の日本の医療はこれらの理念からほど遠いと思わざるをえない。
予約制と名ばかりの長い外来の待ち時間。すべての検査の必要性を十分説明を受けたという人はまずいないのではないか。治療については一時期よりは患者さんの意思や希望が尊重されるようになってきた。しかし、実施可能な十分な選択肢が与えられているだろうか。年齢だけを理由に主治医から「もう年だからこのまま様子みた方がいい。」「お年だから無理です。」と言われたという話も聞く。高齢でもまだ元気で、まだまだ長生きしたいという患者さんに対してである。

もし頭書の理念を厳密に実施しようとすると、患者さんを捌ききれなくなって、病院の機能は麻痺してしまうだろう。だから”患者さんへのお願い”として、「診療を円滑に受ける為、医療従事者の指示に従って下さい。」(静岡市内の某総合病院)とか「病院の規則を守って下さい。」と掲げざるをえないのである。これが本音であり、理念は建前という事である。

理念どうりの病院は可能なのだろうか。可能なら何年先なのか。建前で終らせないように、医療者全てが真剣に考えていただきたいものである。
                                                       (文 篠原みきお)  

Posted by みきちゃん at 17:19
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2017年12月04日

がん最新情報ⅩⅤ がん放射線療法の新たな拡がり



がん最新情報ⅩⅤ がん放射線治療の新たな拡がり

放射線治療は乳房温存手術*後の乳がんや、手術後遺残や転移の可能性の高いがん、手術不能の進行がんなど、多くの固形がんの有力な治療法の一つです。
医療放射線は次のように分類できます。
光子線ーX線、ガンマ線(脳腫瘍のガンマナイフ)
粒子線ー陽子線、重粒子線(炭素線)
この内粒子線治療は2016年4月に一部の疾患が保険適用になったこともあって、新たな拡がりを見せています。

*乳房を全部切除するのではなく、一部切除する術式

emoji33粒子線治療の特徴
光子線は照射された体の表面に近い所で最もエネルギーを出しますが、粒子線はある深さまで進んでから最大に出すことができます。又、直後に止まりますので(ブラッグピーク)、後方の臓器に殆ど影響を与えずにがんだけを死滅させることができます。(図参照)


emoji33陽子線治療
水素の原子核(陽子)を加速させて照射します。小児がんに保険適用になりましたので、それまでの約300万円の負担が軽減されました。
現在全国に12の施設があります。静岡がんセンターでは平成26年度末迄に約1800名の治療が行われました。部位は、前立腺がん42%、肺、縦郭腫瘍15%、肝がん12%、頭頸部がん9%等です。


emoji33重粒子線治療
手術不能(非適応)の骨軟部がんに保険が適用されています。その他前立腺がん、頭頸部がん、肺がん、肝がん等が治療の対象ですが、陽子線同様先進医療*の適用になります。
この治療は1994年千葉市の放射線医学総合研究所で世界で初めて開始されました。2017年2月時点で1万余人の経験があります。今全国に5施設、世界で10施設とまだ少ないのですが、今後10年以内で2~3倍に増えそうな勢いで建設や計画が進んでいます。(日経デジタルヘルスー重粒子線がん治療、新時代へー2017年11月)
これには技術の進化が大きく寄与しています。機械、施設が小型化、軽量化され、建設費用も300億円から150億円に下がってきています。
又、腫瘍の形状に合わせて腫瘍を塗りつぶすようにビームを照射(スキャニング照射)し、陽子線なみの自由度の高い照射が可能になったこともあげられます。
*治療費は自己負担ですが、検査、入院費は保険適用

emoji33今後の方向
2019年に開始を目指している山形大学の嘉山氏は、「重粒子線は10年後にはごく普通の存在になるだろう。」と述べています。
国内5施設の全症例のデーターを登録して有効性や安全性を検討する取り組みを始めていることはとても大切な事です。さらに保険適用疾患の拡大にも期待したいと思います。
                                          (文責 篠原)

  

Posted by みきちゃん at 11:55
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2017年11月18日

みきちゃんの医療独り言



みきちゃんの医療独り言ー-検査結果は必ず聞こうー

医療相談をしていると、「受けた検査の結果を聞いていない。」という方が時におられます。主治医の見落としや、連絡のまずさから検査結果が患者さんに伝わらず、がんが末期迄進行してしまったー等の新聞報道を時々見ます。勿論病院が悪いのですが、患者さんが「この前のCTの結果はどうでしたか?」など聞けば、この様なことはまず起らないはずですね。
”先生が忙しそうなのでついつい聞きそびれてしまった”方もおられるかもしれませんが、遠慮しては絶対にいけません。せっかく(苦労して?)受けた検査ですから、結果は必ず聞きましょうね。
 (文 篠原みきお)

  

Posted by みきちゃん at 17:31
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2017年11月05日

がん最新情報ⅩⅣ 肝がんの原因が変わりつつある




がん最新情報ⅩⅣ 肝がんの原因が変わりつつある -非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に要注意ー

肝がんの多くは肝炎ウイルスの長期にわたる持続感染が原因で、B型肝炎約15%、C型肝炎約60%とされています。
しかし最近アルコールをあまり飲まない人で脂肪肝、肝硬変から肝がんを発症する病気が注目されています。

emoji33非B,非C肝がんが増加している
1991年から2015年迄全国53施設の初発肝がんの調査結果が発表されました。(第25回日本消化器関連学会2017年10月 東京大学 建石氏)
1991年~2010年(前期)の非B非C肝がん患者は4万5776例で全肝がん中の割合は10%以下から24%に増加しました。2011年~2015年(後期)の新規患者では2015年時点で32%まで増加していました。「男性はアルコール摂取量1日20g以下の人が37%と最多で、次いで100g以上の多飲者は15%でした。女性は20g以下の人が90%で、ほぼNASHと言ってよい。」と分析しています。合併疾患(後期)は糖尿病51.6%、高血圧58.6%と高率でした。
肥満の程度を示すBMI(体重÷身長m×m)は前期23.9、後期24.2で、意外と肥満者が多くない結果でした。


emoji33アルコール性脂肪性肝炎(NASH=non-alcoholic steatohepatitis)とは何か
アルコール摂取量が1日20g(ビール500ml,日本酒1合)以下でも脂肪肝→肝硬変→肝がんと進行する病気で、非アルコール性脂肪肝の約1割といわれています。確定診断には肝生検が必要ですが、組織像はアルコール性肝炎に酷似しています。
診断基準は次のように示されています。(new臨床便覧 2017、NASH/NAFLD)
*ALT(GPT)100以上
*メタボリックシンドローム等の危険因子を伴う
*食事や運動によっても改善されないALTの上昇
*血小板の減少(肝の繊維化をよく表す)、肝繊維化マーカー(4型コラーゲン7S,ヒアルロン酸等)の上昇

岡上氏(大阪府済生会吹田病院)は、「BCウイルスによる肝硬変は血小板が10万を切る事が多いが、NASHでは15万くらいで肝硬変になっていることが多い。18万を切ったら肝臓専門医に受診を勧める。ALTもBC型より高値を示さず、多くは80~160以下。」と述べています。

emoji33
NASHの治療法はある?
現在NASHには特効薬はありません。日本消化器病学会のガイドライン(2014年)では、肥満のある人には食事、運動によるー7%の減量を奨めています。(組織学的に改善の報告あり) 肥満や合併疾患の無い人にはビタミンEを薦めています。糖尿病の人にはピオグリタゾン(アクトス)、SGLT2阻害薬(肝繊維化の抑制効果)、高血圧の人にはアンジオテンシン受容体拮抗剤(ARB)が有効としています。

emoji33どのような心がまえが必要か
薬でBC肝炎ウイルスが制圧できるようになったので、肝がんの原因としては漸減していくでしょう。岡上氏は、「2024年ころにはNASHを含む肝炎ウイルス以外の原因による肝がんが最も多くなるだろう。」と予測しています。遺伝的素因(遺伝子)も重要視されていますし、お酒をそう飲まなくても太っていなくてもなってしまうとは厄介な病気です。
糖尿病や高血圧がある人は、肝機能の状態や脂肪肝、肝繊維化の有無に十分注意していく必要がありそうです。

                                                            >(文責 篠原)
  

Posted by みきちゃん at 19:14
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2017年09月18日

がん最新情報ⅩⅢ 遺伝子検査でがん発症はどれ位判るか





がん最新情報ⅩⅢ 遺伝子検査でがん発症はどれくらい判るか

がんの遺伝子検査や治療への応用(ゲノム医療)が日本でも盛んになってきました。ここ3~4年個人向けの遺伝子検査サービスが急増して、インターネット(所によっては一般店舗)で簡単に購買できます。
しかし、どれだけがん発症を予測できるのか?、結果は信用できるか?、どの商品を選んだらよいか?等々悩まれる方は少なくないでしょう。
詳細はサイトを見てよく比較、検討する必要があります。


emoji33がん、成人病の発症リスクや、体質を調べる遺伝子検査

商品名                  解析項目                      検体                         価格

①Mycode(マイコード)      病気、体質等約280項目               唾液                       29800円
                     (がん38項目                      唾液                       14800円)
②GeneLife(ジーンライフ)     病気、体質等約360項目           唾液または口腔粘膜               29800円
③HealthDataLab          病気、体質等約290項目              唾液                        29800円
④Cancer-Plus              がん36項目                    唾液                       50000円 

①②③は非常に多くの項目を解析します。各種がんの他、高血圧、糖尿病、心筋梗塞等の成人病、アルコール耐性、肥満、薄毛のリスクといった体質も総合的に解析します。


結果の報告は大体「あなたの〇〇がんの発症リスクは〇〇倍です」、といったように表示されます。この数字は自分と同じ遺伝子型を持った人達の傾向を表すもので、その人個人の発症リスクを示すわけではありません。1.5倍と出たら日本人の平均や最もリスクの低い人に比べて1.5倍がんになりやすいということになりますが、実際になるかどうかは解りません。

emoji33遺伝子レベルのがん早期スクリーニング検査

消化器がんマイクロアレイ血液検査
血液でmRNA(メッセンジャーRNA)を解析して、胃、大腸、すい臓、胆道がんを判定します。がんが小さい内は上昇しない腫瘍マーカーに比べて早期から陽性になるため、早期発見に有力です。感度*は98.5%、特異度**は92.9%と高精度です。価格は78000円です。
 検査を受けられる医療機関は、「マイクロアレイ血液検査ー受託検査サービス 株式会社キュービクス」を検索して下さい。

*がん患者をがんと判定する確率
**がん患者以外をがんでないと判定する確率


CanTect(キャンテクト)
全てのがんを網羅的に早期に判定する検査で、部位は特定できません。リスクはA(健常者45%、がん5%位)からD(健常者5%、がん45%位)の4段階で表示されます。医療機関は「http://www.genescience.jp/提携医療機関一覧」を検索して下さい。


emoji33どの検査を選ぶか迷ったら
まず、自分は何を知りたいか、何を目的に検査するのかが大切です。
①②③の多項目検査は病気予防や生活習慣の見直しの参考になります。がん発症の予測には弱いですが、予防管理や高リスクのがん検診を受けるモチベーションを高めることになるでしょう。
マイクロアレイやCanTectは(特定の)がんに不安の大きい人や、がん家系(家族にがんが多い)の人にお薦めです。
がん発症のリスクを高率に予測できる検査はまだ少なく限られています。今後の研究で向上していく事を期待しましょう。

                                                 
                                                        (文責 篠原)  

Posted by みきちゃん at 16:28
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2017年08月20日

がん最新情報Ⅻ 早期胃がんに対する内視鏡的切除と外科手術の長期成績





がん最新情報Ⅻ 早期胃がんに対する内視鏡的切除と外科手術の長期成績

胃がんの63%は早期の1期(がんの浸潤が粘膜下層迄で、リンパ節転移は1~2個迄)で見つかっており、適切な治療をすれば100%近く治ります。(10年生存率は95.1%-国立がん研究センター)
早期に発見される胃がんの増加に伴い、内視鏡的治療(ポリペクトミー、粘膜切除術ーEMRー、粘膜下層剥離術ーESDー)の施行率が増加しています。しかし、これで完全に根治できるのか?、再発はないか?、外科手術(胃切除)の方が長生きできるのでは?、という疑問が当然あります。
両者の10年間の成績を比較した論文をご紹介しますので、選択の参考にしていただきたいと思います。


emoji33内視鏡的切除の適応
日本胃癌学会作成の「胃癌治療ガイドライン」第5版最新版が2017年にでましたので、どんな病変が適応になるのか見てみましょう。
絶対適応病変(リンパ節転移の確率が1%未満で、リンパ郭清を伴う胃切除と同じ長期予後が得られているもの)
がんが粘膜内にとどまる分化型がん(悪性度の低いがん)で、潰瘍(瘢痕)*の無いものは大きさに制限なし、あるものは3cm以下
適応拡大病変(長期予後のデータが不十分なもの)
がんが粘膜内にとどる未分化型がん(悪性度の高いがん)で、大きさ2cm以下
相対的適応病変
がんが粘膜下層に少し入った(0.5mm厚ーSM1-)分化型がん 患者さんの状態に応じて行うとされている(あくまで標準治療はリンパ郭清を伴う胃切除です)

*潰瘍(瘢痕)がある場合、粘膜下層の繊維化で病変の切除が困難になることがある


emoji33内視鏡的切除と外科手術の長期成績
この研究はPyoJHらにより2016年に発表されました。(Am.J.Gastroentel.2016Feb;111(2))
早期胃がん(粘膜内、粘膜下層にとどまるがん)に対し1290例の内視鏡切除群と1273例の外科手術群を検討しました。
結果は、10年後全生存率は内視鏡群96.7%、手術群94.9%で差はありませんでした。
10年後の無再発生存率は内視鏡群93.5%、手術群98.2%で、優位に手術群が優れていました。
この差は、主に内視鏡群の異時性再発(ある時期をおいて再発してくるもの)の為と考えられました。

emoji33どちらを選択したらよいか
内視鏡切除は胃を切除しないので、異時性再発の可能性は当然ありえるわけですが、H.ピロリ菌の除菌や、定期的なフォローによる再治療などで、無病生存率はもっと向上すると考えられます。①の絶対適応と②の適応拡大病変は、内視鏡的切除を選択して良いと思います。
③の粘膜下層に浸潤した相対的適応病変の場合が一つの問題です。年齢、全身状態、合併症の有無等を考慮して決められることですが、主治医とよく話し合った上で、患者さんの意思も尊重されるべきでしょう。
内視鏡的治療でも高い確率で10年間生きられる報告ですので、高齢化社会が進む今後、全身への負担が少ないこの選択をする人が増えていくと思われます。
                                                                (文責 篠原)


  

Posted by みきちゃん at 21:40
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2017年07月04日

がん最新情報ⅩⅠ 中学生のピロリ菌検診・除菌は是か否か



 がん最新情報ⅩⅠ
中学生のピロリ菌検診・除菌は是か否か


胃がんとヘリコバクター・ピロリ菌(HP)については2016年8月12日投稿の「がん最新情報Ⅰ」を是非ご覧下さい。
この中で、症状の無い健康者の除菌については、胃がん発症や胃癌死亡は減らすかもしれないが(差が無いとの反論がありました)、総死亡は減らず、現段階では除菌で胃がんが予防できるか明確でない、ということでした。
HP感染の大半は幼小児期と推測されています。「HP感染の診断と治療のガイドライン」作製委員長の加藤元嗣氏は、「年齢が低い内に除菌できれば将来胃がん発症を防げる可能性が高い。」と話し、中学生以降がスクリーニング検査の対象になる、としています。


emoji33佐賀県の県単位での取り組み
中学生を対象にした除菌費用迄助成する自治体は2013年岡山県真庭市に始まり、今回の佐賀県で10か所になります。(日経メヂカル編集部調べ、Report2017/6/8)
2016年度佐賀県は中学3年生約9000人全員を対象に検査を開始しました。県単位では初めてです。
事業の流れは、同意した生徒に学校検診に追加する形で尿中抗体検査(1次検査)を行います。陽性の場合便中抗原検査(2次検査)を行い、陽性者は15歳になってから除菌が行われます。治療は、ボノプラザン(タケキャブ∸抗潰瘍薬ー)、アモキシシリン、クラリスロマイシン(いずれも抗菌剤)、宮入菌製剤(ミヤBM)を7日間服用します。服薬後2~3カ月に除菌治療の説明を受けた医療機関(県内20か所)で尿素呼気試験で除菌判定を行います。


emoji331年間の実績の結果
6888人が検体を提出し、1,2次共陽性者は248人(3.6%)でした。除菌を行った178人で判定結果が出た98人中85人(86.7%)が除菌に成功しました。副作用は殆ど無かったようです。

emoji33中学生除菌の問題点と反対論
日本ヘリコバクター学会理事長の富山大学杉山敏郎氏は、「ボノプラザンは国内では小児に保険適用が無く、外国では安全性から承認されていないので、健康な小児に用いるべきではない。」と強調します。順天堂大学清水俊明氏は、HPの薬剤耐性化の恐れを指摘しています。日本小児栄養消化器肝臓学会は、小児(中学迄と規定)への胃がん予防を実際に証明したエビデンスが無いことを理由に、現状では推奨できない旨公表する予定です。

emoji33あなたの子どもに除菌を奨めますか?
自分の子どもが将来胃がんになることをもし止められるなら止めたい、と親なら誰も思うでしょう。中学生の検査・除菌が今後拡がっていくかはわかりません。私は、30歳以下の感染率が約25%と低い(中学生はもっと低い)時期での検査はどうか?という疑問があります。又、「除菌したから、又はHP陰性だから私は一生胃がんにならない。」と錯覚する生徒が多く出てくる恐れが心配です。この子たちが30~40年後癌年齢に達したときの発症率の比較研究を待たなければ、この是否は判らないのではという気がしています。
                                         (文責 篠原)  

Posted by みきちゃん at 17:22
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