2020年04月15日
がん最新情報ⅩⅩⅣ 乳がんを切らずに治すラジオ波焼灼療法
がん最新情報ⅩⅩⅣ 乳がんを切らずに治すラジオ波焼灼療法

乳がんは女性のがんの1位で、2016年の新たな患者数は約9万5000人でした。年々増加し続けています。早期のステージⅠ期(大きさ2cm以下で、リンパ節転移なし)でしっかり治療すれば10年生存率は97.6%でほぼ完治できます。乳房を部分切除する乳房温存手術が標準治療とされています。
しかし、〝できれば切らないで治したい″、〝後に変形を残したくない″という患者さんもおられると思います。これを叶えるのがラジオ波焼灼療法です。
ラジオ波焼灼療法(以下RFA)とはどんな治療ですか
全身麻酔のもと、超音波(US)で見ながら電極針を腫瘍に貫通させます。電磁波の一種ラジオ波を約10分通電して熱(80~90°C)を発生させて腫瘍をタンパク凝固壊死させます。直径3cmの範囲が壊死するとされています。抜針後USで壊死範囲を確認します。


どのような症例に行えますか
先進医療*で行う場合は次の条件を満たさなければなりません。
大きさ1.5cm以下の単発がん。腋窩リンパ節転移や遠隔転移がない。皮膚浸潤やへこみなどの皮膚所見がない。前治療をしていない。年齢20~85歳。
*先進医療 検査代、入院費等は保険適用ですが、手術などの技術料は自己負担
施行後のフォローは(先進医療で行う場合)
数週間後から放射線照射を行います。3か月後、1年後に画像診断と針生検を行います。(もし焼き残しがあった時は乳房温存手術を行います。)以後6か月に1回US,MRI等の画像診断を5年間行います。


( 国立がん研究センター)
このようにRFA後はかなり厳しいチエツクが行われますが、この治療が根治術の一つとして広く認められる為の研究として必要とされているからです。
RFAの歴史、成績、評価
〝切らなくて済む”という魅力的な言葉に誘導されて2000年代はじめに一部の医療機関で盛んに行われました。その為適応の無い人まで行われた為、再発の事例がありました。そこで日本乳癌学会は2010年に調査を行いました。RFAは29施設で1049例行われ、内9施設が572例を研究以外で行っていました。学会は「早期乳がんの標準治療とはいえないので、研究以外の目的では行なわないよう」との通達を出しました。
2010年前後に行われた試験の報告では、1cm以下の52人(全て5年過ぎている)で再発なしとしています(国立がん研究センター木下 がん+プラス2019.1)
2013年~17年、先進医療で以下の施設で372例行われました。結果がでるのは2022年です。
先進医療でRFAを行っているのは次の施設です。(令和2年4月1日現在ー厚労省ー)
北海道がんセンター 群馬県立がんセンター 国立がん研究センター病院 国立がんセンター東病院 千葉県がんセンター 岐阜大学病院 岡山大学病院 四国がんセンター 広島市民病院
拡大先進医療として「患者申出療養」で実施できるのはこれ以外の次の3施設です。(2019年3月承認) 東京医療センター 駒込病院 新潟がんセンター
厚労省の「先進医療技術審査部会」の2014年11月の評価は次のとうりです。「有効性について、41例中3か月後の生検で5例(12.2%)にがんの不完全焼灼と確認された」「乳房部分切除でも追加切除が20~30%あることを考慮すると、劣らない治療であることが期待できる」「成績は短期で、生検で遺残が拾い上げられていない可能性がある。よって、積極的に優越性を示す結果ではない」
RFAはまだ歴史の浅い治療で、症例数も多くありません。今は大きさ1.5cm迄ですが、将来2.0cm位迄確実に行われるようになる可能性があります。そうなると症例数も増えるでしょう。再発のリスクが手術よりも高い可能性を十分理解した上で、先進医療が認められた施設で受けるのがよいでしょう。
(文責篠原)

乳がんは女性のがんの1位で、2016年の新たな患者数は約9万5000人でした。年々増加し続けています。早期のステージⅠ期(大きさ2cm以下で、リンパ節転移なし)でしっかり治療すれば10年生存率は97.6%でほぼ完治できます。乳房を部分切除する乳房温存手術が標準治療とされています。
しかし、〝できれば切らないで治したい″、〝後に変形を残したくない″という患者さんもおられると思います。これを叶えるのがラジオ波焼灼療法です。

全身麻酔のもと、超音波(US)で見ながら電極針を腫瘍に貫通させます。電磁波の一種ラジオ波を約10分通電して熱(80~90°C)を発生させて腫瘍をタンパク凝固壊死させます。直径3cmの範囲が壊死するとされています。抜針後USで壊死範囲を確認します。


先進医療*で行う場合は次の条件を満たさなければなりません。
大きさ1.5cm以下の単発がん。腋窩リンパ節転移や遠隔転移がない。皮膚浸潤やへこみなどの皮膚所見がない。前治療をしていない。年齢20~85歳。
*先進医療 検査代、入院費等は保険適用ですが、手術などの技術料は自己負担

数週間後から放射線照射を行います。3か月後、1年後に画像診断と針生検を行います。(もし焼き残しがあった時は乳房温存手術を行います。)以後6か月に1回US,MRI等の画像診断を5年間行います。


( 国立がん研究センター)
このようにRFA後はかなり厳しいチエツクが行われますが、この治療が根治術の一つとして広く認められる為の研究として必要とされているからです。

〝切らなくて済む”という魅力的な言葉に誘導されて2000年代はじめに一部の医療機関で盛んに行われました。その為適応の無い人まで行われた為、再発の事例がありました。そこで日本乳癌学会は2010年に調査を行いました。RFAは29施設で1049例行われ、内9施設が572例を研究以外で行っていました。学会は「早期乳がんの標準治療とはいえないので、研究以外の目的では行なわないよう」との通達を出しました。
2010年前後に行われた試験の報告では、1cm以下の52人(全て5年過ぎている)で再発なしとしています(国立がん研究センター木下 がん+プラス2019.1)
2013年~17年、先進医療で以下の施設で372例行われました。結果がでるのは2022年です。
先進医療でRFAを行っているのは次の施設です。(令和2年4月1日現在ー厚労省ー)
北海道がんセンター 群馬県立がんセンター 国立がん研究センター病院 国立がんセンター東病院 千葉県がんセンター 岐阜大学病院 岡山大学病院 四国がんセンター 広島市民病院
拡大先進医療として「患者申出療養」で実施できるのはこれ以外の次の3施設です。(2019年3月承認) 東京医療センター 駒込病院 新潟がんセンター
厚労省の「先進医療技術審査部会」の2014年11月の評価は次のとうりです。「有効性について、41例中3か月後の生検で5例(12.2%)にがんの不完全焼灼と確認された」「乳房部分切除でも追加切除が20~30%あることを考慮すると、劣らない治療であることが期待できる」「成績は短期で、生検で遺残が拾い上げられていない可能性がある。よって、積極的に優越性を示す結果ではない」
RFAはまだ歴史の浅い治療で、症例数も多くありません。今は大きさ1.5cm迄ですが、将来2.0cm位迄確実に行われるようになる可能性があります。そうなると症例数も増えるでしょう。再発のリスクが手術よりも高い可能性を十分理解した上で、先進医療が認められた施設で受けるのがよいでしょう。
(文責篠原)