2017年12月18日
みきちゃんの医療独り言ー病院の理念の建前と本音ー
みきちゃんの医療独り言ー病院の理念の建前と本音ー
昨今、病院は理念、基本方針なるものを掲げて公表している。いわく、「患者さま中心の医療を実践」「患者さんを主体として」「患者さんの意思を尊重」等々。
私が大腸がんで入院、手術を受けた経験も踏まえて、現在の日本の医療はこれらの理念からほど遠いと思わざるをえない。
予約制と名ばかりの長い外来の待ち時間。すべての検査の必要性を十分説明を受けたという人はまずいないのではないか。治療については一時期よりは患者さんの意思や希望が尊重されるようになってきた。しかし、実施可能な十分な選択肢が与えられているだろうか。年齢だけを理由に主治医から「もう年だからこのまま様子みた方がいい。」「お年だから無理です。」と言われたという話も聞く。高齢でもまだ元気で、まだまだ長生きしたいという患者さんに対してである。
もし頭書の理念を厳密に実施しようとすると、患者さんを捌ききれなくなって、病院の機能は麻痺してしまうだろう。だから”患者さんへのお願い”として、「診療を円滑に受ける為、医療従事者の指示に従って下さい。」(静岡市内の某総合病院)とか「病院の規則を守って下さい。」と掲げざるをえないのである。これが本音であり、理念は建前という事である。
理念どうりの病院は可能なのだろうか。可能なら何年先なのか。建前で終らせないように、医療者全てが真剣に考えていただきたいものである。
(文 篠原みきお)
2017年12月04日
がん最新情報ⅩⅤ がん放射線療法の新たな拡がり

がん最新情報ⅩⅤ がん放射線治療の新たな拡がり
放射線治療は乳房温存手術*後の乳がんや、手術後遺残や転移の可能性の高いがん、手術不能の進行がんなど、多くの固形がんの有力な治療法の一つです。
医療放射線は次のように分類できます。
光子線ーX線、ガンマ線(脳腫瘍のガンマナイフ)
粒子線ー陽子線、重粒子線(炭素線)
この内粒子線治療は2016年4月に一部の疾患が保険適用になったこともあって、新たな拡がりを見せています。
*乳房を全部切除するのではなく、一部切除する術式

光子線は照射された体の表面に近い所で最もエネルギーを出しますが、粒子線はある深さまで進んでから最大に出すことができます。又、直後に止まりますので(ブラッグピーク)、後方の臓器に殆ど影響を与えずにがんだけを死滅させることができます。(図参照)


水素の原子核(陽子)を加速させて照射します。小児がんに保険適用になりましたので、それまでの約300万円の負担が軽減されました。
現在全国に12の施設があります。静岡がんセンターでは平成26年度末迄に約1800名の治療が行われました。部位は、前立腺がん42%、肺、縦郭腫瘍15%、肝がん12%、頭頸部がん9%等です。

手術不能(非適応)の骨軟部がんに保険が適用されています。その他前立腺がん、頭頸部がん、肺がん、肝がん等が治療の対象ですが、陽子線同様先進医療*の適用になります。
この治療は1994年千葉市の放射線医学総合研究所で世界で初めて開始されました。2017年2月時点で1万余人の経験があります。今全国に5施設、世界で10施設とまだ少ないのですが、今後10年以内で2~3倍に増えそうな勢いで建設や計画が進んでいます。(日経デジタルヘルスー重粒子線がん治療、新時代へー2017年11月)
これには技術の進化が大きく寄与しています。機械、施設が小型化、軽量化され、建設費用も300億円から150億円に下がってきています。
又、腫瘍の形状に合わせて腫瘍を塗りつぶすようにビームを照射(スキャニング照射)し、陽子線なみの自由度の高い照射が可能になったこともあげられます。
*治療費は自己負担ですが、検査、入院費は保険適用

2019年に開始を目指している山形大学の嘉山氏は、「重粒子線は10年後にはごく普通の存在になるだろう。」と述べています。
国内5施設の全症例のデーターを登録して有効性や安全性を検討する取り組みを始めていることはとても大切な事です。さらに保険適用疾患の拡大にも期待したいと思います。
(文責 篠原)