2016年10月20日
がん最新情報Ⅲ 前立腺がんとPSA-放置してよいがんがある?-
がん最新情報Ⅲ
前立腺がんとPSA-放置してよいがんがある?
PSA*が高くがんが心配
現在日本では住民検診でPSAが行われています。これはスウエーデンでの14年間の研究(2010年)で、検診で前立腺がんで死ぬ確率が44%減少したとの報告等で、日本泌尿器科学会等が有効性があるとして推奨してきた経緯があります。
PSAが高値を示すのはがん以外に、前立腺肥大症、前立腺炎、機械的な刺激(長時間の自転車運転等)があります。
がんではPSA値でがんの確率が判っています。(日本泌尿器科学会)
PSA値 がんの確率
4ng/ml前後 約30%
8~10 約50%
20~30 約80%
40以上 ほぼ100%
以外に高い確率に驚かれたことと思います。
*PSA:前立腺特異抗原 上皮細胞から精液や血中に分泌されるタンパク
増えている前立腺がん
前立腺がん患者数は、2000年2万人超、2006年4万人超、(2012年は男性がんの4位)、と急速に増加していて、2016年は9万人超になり、男性がんの1位になると予測されています。しかし、約半数が比較的早期なⅠ期(画像で不明で、組織のごく一部に偶発的に見つかる)で発見されています。(2014年国立がん研究センター)これはPSA検診のおかげかもしれません。したがって生存率も良く、5年相対生存率*100%、10年84.4%、5年後推計でも97.5%で、がんで一番高い生存率と予測されています。
がんと診断されても落ち込むことはありません。前立腺がんの多くは進行が遅く、たちの良いものなのです。
*相対生存率 前立腺がん以外による死亡を除くなど補正した率
検査とリスク診断
がんの確診は生検で行われます。これは、肛門から超音波下で細い針で何ケ所かから組織を採取して調べます。がん細胞の有無と共に、グリーソンスコアー(以下GS)が重要視されます。GSとは悪性度を1から5段階に分けて、1番多い成分と2番目を足した数で表します。
PSA値とGSと大きさ・進行度を合わせてリスク(危険度)分類を行います。これが治療方針を考える上で重要です。
リスク度 PSA値 GS値 進行度
低リスク ≦10 ≦6 片側の1/2以内
中リスク 10~20 7 両側に進展
高リスク ≧20 8~10 前立腺外へ進展
何もしないで経過をみる選択肢とは
定期的にPSAを検査するだけで特に治療をしない方針で、待機療法や積極的監視療法と言われています。
1298人の低リスク患者にこれを行い、15年間で死亡2人、転移3人で、15年生存率99.9%の報告があります。(2015年ジョンスホプキンス大) PSAスクリーニングによって見つかった限局性がん1643人を監視、摘出手術、内分泌+放射線治療の3群に分けて10年間追跡した報告では、3群間で前立腺がん死亡率に有意差はありませんでした。(死亡数は8人、5人、4人、死亡率は1000人・年当たり1.5人、0.9人、0.7人) 監視療法は約45%が10年間根治治療に切り替えることなく経過したとしています。(2016年NEJM)
待機療法を選択するか?
”早期です”と言われても、がんでしたら何もしないのは不安があると思います。いろいろな報告から確実に低リスク(PSA10以下、GS6以下、がんが小さい)であれば、ほっておいても前立腺がんで死ぬことは殆ど無く、生涯を全うできると考えられます。北欧では80%位が、米国では低リスク患者の約20%が選択していると言われています。
定期的なPSAのチエックは勿論のこと、上昇傾向があれば詳しい検査や治療への移行も躊躇しないことが大切でしょう。 (文責 篠原)
前立腺がんとPSA-放置してよいがんがある?
PSA*が高くがんが心配
現在日本では住民検診でPSAが行われています。これはスウエーデンでの14年間の研究(2010年)で、検診で前立腺がんで死ぬ確率が44%減少したとの報告等で、日本泌尿器科学会等が有効性があるとして推奨してきた経緯があります。
PSAが高値を示すのはがん以外に、前立腺肥大症、前立腺炎、機械的な刺激(長時間の自転車運転等)があります。
がんではPSA値でがんの確率が判っています。(日本泌尿器科学会)
PSA値 がんの確率
4ng/ml前後 約30%
8~10 約50%
20~30 約80%
40以上 ほぼ100%
以外に高い確率に驚かれたことと思います。
*PSA:前立腺特異抗原 上皮細胞から精液や血中に分泌されるタンパク
増えている前立腺がん
前立腺がん患者数は、2000年2万人超、2006年4万人超、(2012年は男性がんの4位)、と急速に増加していて、2016年は9万人超になり、男性がんの1位になると予測されています。しかし、約半数が比較的早期なⅠ期(画像で不明で、組織のごく一部に偶発的に見つかる)で発見されています。(2014年国立がん研究センター)これはPSA検診のおかげかもしれません。したがって生存率も良く、5年相対生存率*100%、10年84.4%、5年後推計でも97.5%で、がんで一番高い生存率と予測されています。
がんと診断されても落ち込むことはありません。前立腺がんの多くは進行が遅く、たちの良いものなのです。
*相対生存率 前立腺がん以外による死亡を除くなど補正した率
検査とリスク診断
がんの確診は生検で行われます。これは、肛門から超音波下で細い針で何ケ所かから組織を採取して調べます。がん細胞の有無と共に、グリーソンスコアー(以下GS)が重要視されます。GSとは悪性度を1から5段階に分けて、1番多い成分と2番目を足した数で表します。
PSA値とGSと大きさ・進行度を合わせてリスク(危険度)分類を行います。これが治療方針を考える上で重要です。
リスク度 PSA値 GS値 進行度
低リスク ≦10 ≦6 片側の1/2以内
中リスク 10~20 7 両側に進展
高リスク ≧20 8~10 前立腺外へ進展
何もしないで経過をみる選択肢とは
定期的にPSAを検査するだけで特に治療をしない方針で、待機療法や積極的監視療法と言われています。
1298人の低リスク患者にこれを行い、15年間で死亡2人、転移3人で、15年生存率99.9%の報告があります。(2015年ジョンスホプキンス大) PSAスクリーニングによって見つかった限局性がん1643人を監視、摘出手術、内分泌+放射線治療の3群に分けて10年間追跡した報告では、3群間で前立腺がん死亡率に有意差はありませんでした。(死亡数は8人、5人、4人、死亡率は1000人・年当たり1.5人、0.9人、0.7人) 監視療法は約45%が10年間根治治療に切り替えることなく経過したとしています。(2016年NEJM)
待機療法を選択するか?
”早期です”と言われても、がんでしたら何もしないのは不安があると思います。いろいろな報告から確実に低リスク(PSA10以下、GS6以下、がんが小さい)であれば、ほっておいても前立腺がんで死ぬことは殆ど無く、生涯を全うできると考えられます。北欧では80%位が、米国では低リスク患者の約20%が選択していると言われています。
定期的なPSAのチエックは勿論のこと、上昇傾向があれば詳しい検査や治療への移行も躊躇しないことが大切でしょう。 (文責 篠原)
Posted by みきちゃん at 21:51
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