2018年06月21日
がん最新情報ⅩⅩ 乳がん検診ーマンモグラフィーーの問題点
がん最新情報ⅩⅩ 乳がん検診ーマンモグラフィーーの問題点

現在日本の乳がん検診は40歳以上に2年に1回のマンモグラフィーを唯一推奨しています。しかし乳腺密度が高い「高濃度乳房」はがんが見つけにくいのですが、これを受診者に知らせる自治体がごく少ないことが問題視されていました。
今年3月厚労省は日本乳癌検診学会など3つの部会の意向を受けて、「一律に通知する事は時期尚早で望ましくない。」旨全国の自治体に通知しました。
この現状で受診者はどのように対処したら良いでしょうか。
高濃度乳房とは何か
乳房は主に乳腺と脂肪から成っていて、マンモグラフィーでは乳腺は白く、脂肪は黒く写ります。写り方によって「脂肪性」「乳腺散在」「不均一高濃度」「極めて高濃度」の4つに分類されます(乳房の構成)。後者2つを「高濃度乳房」といい全体が白く写ります。がんは白く写るのでこの中にまぎれて見つけ難いのです。

(左)不均一高濃度乳房 (右)極めて高濃度乳房
日本人に高濃度乳房は多いですか? 又、年齢によって違いますか?
はっきりしたデーターはありませんが、40歳以上で約4割と推測されています。全体で5~8割との指摘があります。加齢と共に乳腺は減少し脂肪は増加しますので、高齢者程高濃度乳房は減少します。

40歳代では60%近くが高濃度乳房だが、70歳代は15%位
(H26年度福井県愛知県の住民健診データーより)
なお乳房の大きさと構成は関係ありません。
どの位の自治体が受診者に通知していますか。
昨年2月の読売新聞の131自治体の調査では23自治体が「高濃度で見えずらい」旨通知していました。9自治体が通知予定とし、11自治体が超音波検査を併用していました。前年の16自治体より増えていますが、まだまだ少ない状況です。静岡市静岡医師会はまだ通知をしていません。(2017年2月19日読売新聞)
超音波検査(US)の有益性はどうですか。
USではがんは黒く抜けて写るので、高濃度乳房ではむしろ発見され易いのです。

中央の黒いのががん
今回の厚労省の通知では「死亡率減少の科学的根拠が無い」事を理由にUSを推奨していません。(2018年5月25日読売新聞)
マンモグラフィー単独とUSを併用した検診を比較した日本での試験があります。(Lancet,2016Jan.23)2007年~2011年で40歳代の約7万2000人の試験です。マンモグラフィー単独の感度(がんの人ががんと診断される率)77%に対しUS併用群91.4%で有意に併用群で高い結果でした。USを併用する事でがんの発見率が上がることが示されています。
受診者の心構えは
厚労省は「高濃度でも追加の検査を受ける必要はない。」としながらも、症状のある人や血縁に乳がんの多い人は受診や相談を勧めています。自分の乳房の構成を知る必要性は多くの専門家や自治体担当者も認めるところです。
私は触診で受診した時に自分が高濃度乳房かどうか医師に聞くことをお勧めします。もし不安があれば有料でもUSを受けたら良いと思います。
検診が万能ではないことを肝に銘じておきましょう。
(文責 篠原)

現在日本の乳がん検診は40歳以上に2年に1回のマンモグラフィーを唯一推奨しています。しかし乳腺密度が高い「高濃度乳房」はがんが見つけにくいのですが、これを受診者に知らせる自治体がごく少ないことが問題視されていました。
今年3月厚労省は日本乳癌検診学会など3つの部会の意向を受けて、「一律に通知する事は時期尚早で望ましくない。」旨全国の自治体に通知しました。
この現状で受診者はどのように対処したら良いでしょうか。

乳房は主に乳腺と脂肪から成っていて、マンモグラフィーでは乳腺は白く、脂肪は黒く写ります。写り方によって「脂肪性」「乳腺散在」「不均一高濃度」「極めて高濃度」の4つに分類されます(乳房の構成)。後者2つを「高濃度乳房」といい全体が白く写ります。がんは白く写るのでこの中にまぎれて見つけ難いのです。

(左)不均一高濃度乳房 (右)極めて高濃度乳房

はっきりしたデーターはありませんが、40歳以上で約4割と推測されています。全体で5~8割との指摘があります。加齢と共に乳腺は減少し脂肪は増加しますので、高齢者程高濃度乳房は減少します。

40歳代では60%近くが高濃度乳房だが、70歳代は15%位
(H26年度福井県愛知県の住民健診データーより)
なお乳房の大きさと構成は関係ありません。

昨年2月の読売新聞の131自治体の調査では23自治体が「高濃度で見えずらい」旨通知していました。9自治体が通知予定とし、11自治体が超音波検査を併用していました。前年の16自治体より増えていますが、まだまだ少ない状況です。静岡市静岡医師会はまだ通知をしていません。(2017年2月19日読売新聞)

USではがんは黒く抜けて写るので、高濃度乳房ではむしろ発見され易いのです。

中央の黒いのががん
今回の厚労省の通知では「死亡率減少の科学的根拠が無い」事を理由にUSを推奨していません。(2018年5月25日読売新聞)
マンモグラフィー単独とUSを併用した検診を比較した日本での試験があります。(Lancet,2016Jan.23)2007年~2011年で40歳代の約7万2000人の試験です。マンモグラフィー単独の感度(がんの人ががんと診断される率)77%に対しUS併用群91.4%で有意に併用群で高い結果でした。USを併用する事でがんの発見率が上がることが示されています。

厚労省は「高濃度でも追加の検査を受ける必要はない。」としながらも、症状のある人や血縁に乳がんの多い人は受診や相談を勧めています。自分の乳房の構成を知る必要性は多くの専門家や自治体担当者も認めるところです。
私は触診で受診した時に自分が高濃度乳房かどうか医師に聞くことをお勧めします。もし不安があれば有料でもUSを受けたら良いと思います。
検診が万能ではないことを肝に銘じておきましょう。
(文責 篠原)