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みきちゃん

2022年06月06日

がん・医療無料相談のご利用を!!

がん・医療無料相談のご利用を!!


不安・悩み・疑問をお持ちの方は是非ご連絡ください
TEL:054-247-0716
メール:shi-hope@plum.plala.or.jp
面談はご予約をお願いします(随時)
相談員 篠原 幹男(医師 心理カウンセラー)
     1943年生。東京女子医科大学消化器病センター、国立静岡病院、外科胃腸科医院で主に消化器がん、乳がんの診断、治療、フォロー
     に携わる。自身がん経験者。

    http://gansoudan.eshizuoka.jp

 

    

Posted by みきちゃん at 16:29
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2020年04月15日

がん最新情報ⅩⅩⅣ 乳がんを切らずに治すラジオ波焼灼療法

がん最新情報ⅩⅩⅣ 乳がんを切らずに治すラジオ波焼灼療法



乳がんは女性のがんの1位で、2016年の新たな患者数は約9万5000人でした。年々増加し続けています。早期のステージⅠ期(大きさ2cm以下で、リンパ節転移なし)でしっかり治療すれば10年生存率は97.6%でほぼ完治できます。乳房を部分切除する乳房温存手術が標準治療とされています。
しかし、〝できれば切らないで治したい″、〝後に変形を残したくない″という患者さんもおられると思います。これを叶えるのがラジオ波焼灼療法です。
emoji33ラジオ波焼灼療法(以下RFA)とはどんな治療ですか
全身麻酔のもと、超音波(US)で見ながら電極針を腫瘍に貫通させます。電磁波の一種ラジオ波を約10分通電して熱(80~90°C)を発生させて腫瘍をタンパク凝固壊死させます。直径3cmの範囲が壊死するとされています。抜針後USで壊死範囲を確認します。




emoji33どのような症例に行えますか
先進医療*で行う場合は次の条件を満たさなければなりません。
大きさ1.5cm以下の単発がん。腋窩リンパ節転移や遠隔転移がない。皮膚浸潤やへこみなどの皮膚所見がない。前治療をしていない。年齢20~85歳。
*先進医療 検査代、入院費等は保険適用ですが、手術などの技術料は自己負担

emoji33施行後のフォローは(先進医療で行う場合)
数週間後から放射線照射を行います。3か月後、1年後に画像診断と針生検を行います。(もし焼き残しがあった時は乳房温存手術を行います。)以後6か月に1回US,MRI等の画像診断を5年間行います。




               ( 国立がん研究センター)
このようにRFA後はかなり厳しいチエツクが行われますが、この治療が根治術の一つとして広く認められる為の研究として必要とされているからです。
emoji33RFAの歴史、成績、評価
〝切らなくて済む”という魅力的な言葉に誘導されて2000年代はじめに一部の医療機関で盛んに行われました。その為適応の無い人まで行われた為、再発の事例がありました。そこで日本乳癌学会は2010年に調査を行いました。RFAは29施設で1049例行われ、内9施設が572例を研究以外で行っていました。学会は「早期乳がんの標準治療とはいえないので、研究以外の目的では行なわないよう」との通達を出しました。
2010年前後に行われた試験の報告では、1cm以下の52人(全て5年過ぎている)で再発なしとしています(国立がん研究センター木下 がん+プラス2019.1)
2013年~17年、先進医療で以下の施設で372例行われました。結果がでるのは2022年です。
先進医療でRFAを行っているのは次の施設です。(令和2年4月1日現在ー厚労省ー)
北海道がんセンター 群馬県立がんセンター 国立がん研究センター病院 国立がんセンター東病院 千葉県がんセンター 岐阜大学病院 岡山大学病院 四国がんセンター 広島市民病院
拡大先進医療として「患者申出療養」で実施できるのはこれ以外の次の3施設です。(2019年3月承認) 東京医療センター 駒込病院 新潟がんセンター

厚労省の「先進医療技術審査部会」の2014年11月の評価は次のとうりです。「有効性について、41例中3か月後の生検で5例(12.2%)にがんの不完全焼灼と確認された」「乳房部分切除でも追加切除が20~30%あることを考慮すると、劣らない治療であることが期待できる」「成績は短期で、生検で遺残が拾い上げられていない可能性がある。よって、積極的に優越性を示す結果ではない」

RFAはまだ歴史の浅い治療で、症例数も多くありません。今は大きさ1.5cm迄ですが、将来2.0cm位迄確実に行われるようになる可能性があります。そうなると症例数も増えるでしょう。再発のリスクが手術よりも高い可能性を十分理解した上で、先進医療が認められた施設で受けるのがよいでしょう
                                      (文責篠原) 

  

Posted by みきちゃん at 20:42
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2019年05月31日

がん最新情報ⅩⅩⅢ 子宮頸がんとHPVワクチン

がん最新情報ⅩⅩⅢ 子宮頸がんとHPVワクチン


子宮頸がん(以下頸がん)は毎年1万人が発症し、約2700人が死亡するとされています。特に20~40歳代の働き盛りや子育て世代の若年女性が多くかかります。
頸がんは性行為によるHPV(人パピローマウイルス)の持続感染により発症すること、ワクチンの接種により感染が高率に予防できることが明らかになっています。

emoji33日本で若年の頸がん患者が増えている
頸がんの頻度は1998年以後2.6%増加していますが、特に20歳代は5.1%と最高の増加率です。(Int.J.Cancer,2019May1)


大阪府がん登録(1976~2012年)でも10万人当たりの年齢調整罹患率は2000年以後増加しています。検診で発見が難しく、治療抵抗性(放射線が効きにくい)の腺がんが20~30歳代で増加していることが明らかになりました(QLifePro医療ニュース2019年2月8日)。
emoji33日本におけるHPVワクチン接種について
厚労省は2013年4月予防接種法に基ずいて12~16歳児に定期接種を開始しました。しかし、全身の疼痛、運動障害、知覚障害等の副作用の報告が相次いだためわずか2か月で積極的な勧奨を中止し、現在に至っています。厚労省の「副反応追跡調査」では、2014年11月迄で338万人中副作用は2584人(0.08%)(未回復の重症者は186人)、2017年8月迄は3130人と報告しています。
日本産科婦人科学会などは、副作用発生率が未接種者の率と変わらない事や、世界各国で有効性・安全性が認められ実施されているとして何回か再開を求める声明を出していますが、今だ実現されていません。

emoji33HPV感染と発がん


HPVに感染した人が必ず頸がんを発症するわけではありません。90%は2年以内に自然排泄される一過性の感染です。10%は持続感染になり、中程度異形成→高度異形性(CIN3)→上皮内がんに進んでいきます。CIN3になるのは持続感染者の10%弱、浸潤がんになるのはさらに10%位とされています(感染者の1000人に1人)。
emoji33ワクチンはがん予防効果はあるのか?
ワクチン誕生から10年たって、外国ではがん発生率の減少が報告され始めています。20歳時の細胞診の記録がある13万8692例を調査したスコットランドの報告です。1995~6年に生まれ12~3歳で接種を受けた女性は1998年生まれで非接種者に比べて高度異形性+上皮内がんの有病率は89%低かったと報告しています。(BMJ。2019Apr3)
emoji33娘さんにワクチンを勧めますか?
頸がんの早期発見率は0期(上皮内がん)61%、Ⅰ期(頸部内に留まっている)15%、計76%と全がん中一番です。0期と1期初期でしたら子宮を取らなくても治癒できますので、できればこれ迄に発見したいところです。ワクチンでまず発がん予防に期待しますか?。副作用も含めて親子でよく話し合う必要があります接種してもしていなくても、20歳になったら2年に1回検診を受けましょう。
                                       (文責 篠原)



  

Posted by みきちゃん at 16:18
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2019年03月16日

みきちゃんの医療独り言 がんは怖い病気でなくなったか

みきちゃんの医療独り言 がんは怖い病気でなくなったか

最近テレビ等の医療番組で「がんは治る例が多い」「がんはもう怖い病気ではない」等の専門家の言を耳にする事が多い。本当にそうだろうか。国立がん研究センターのがん登録・統計から実態を見てみよう。
まず癌死亡数が一番気になるところであるが、1980年以来男女共増加し続けている。


2018年の予測では、男223000人、女157000人に登る。原因は人口の高齢化とされている。
がんの死亡率が増加しているかどうか、高齢化などの年齢構成の変化を取り除いた「年齢調整死亡率」は、1995年以来減少している。


しかし年齢階級別でみると男性は40歳~60歳代の死亡率の変化は少ないことに注目しなければならない。(女性は減少している)働き盛りの男性の死亡はあまり減っていないのだ。大腸がん、すい臓がんは男女共近年横ばいで減少していない。
がん罹患率は1985年以降増え続けている。



がんになるのは仕方ない(?)としても、死なない為には早期に発見することだ。10年生存率は全部位で55,5%であるが、Ⅰ期80,6%、Ⅱ期68,3%に対し、Ⅲ期38,5%、Ⅳ期13,1%と進行するとガタッと落ちる。早期発見率の高いがんは長期生存率も高い傾向にある。
早期(0期、Ⅰ期)発見率と10生率は、子宮頚がん76%、70%、胃がん63%、64.3%、乳がん54%、82.8%、前立腺がん51%、92.4%である。これらのがんは早期に発見すれば長生きできる可能性が高く、完治もあって怖くないといえるかもしれない。しかし肺がんはⅠ期40%の発見率でも10生率は30.4%、肝臓がんは44%、14.6%とよくない。
現在市町村の検診は、胃、大腸、肺、乳房、子宮がんが行われているが、2016年迄の推計ではいずれも50%に満たない。(欧米では70~80%と言われている)


検診率が上がらない理由の一つに、「がんは怖くない」「治癒率が向上している」というマスコミの論評にもあるのではと思うのは思い過ごしだろうか。精密検査が必要な人の内、実際受けた人は70~80%なのも問題だ。私はがんは怖い病気だと思つている。何しろ死因の1位である。良いことばかりでなくがんの怖さをもっともっとPRしなければいけないのではないか。我々も他人事ではない、明日は我が身と深刻に受け止めなければいけない。
                                        (文 篠原みきお)




  

Posted by みきちゃん at 11:07
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2018年12月22日

がん最新情報ⅩⅩⅡ -人工知能(AI=Artificial Intelligence)は医療にどんな恩恵をもたらすかー

がん最新情報ⅩⅩⅡ -人工知能(AI=Artificial Intelligennce)は医療にどんな恩恵をもたらすか


AIを利用した医療支援システムの開発が進み、今後ますます加速されると考えられます。画像診断支援AIは既に臨床研究が始まっていて、実際の場で利用している所もあります。

emoji33医療現場で求められているAI機能
がん研究会がんプレシジョン研究センター長中村祐輔氏は、画像解析やゲノム医療だけでなく現場で重要なAI機能の可能性について述べています。(「時流ー癌治療のこれから」m3.com2018年2月13日配信)
①AIの音声認識能力による時間、労力の削減
 ・患者さんとの会話を自動的に電子カルテに残す(患者さんの目を見ながら診療できるメリット)
 ・診察、手術、看護の記録を自動的に行う(看護師さんの本来の業務の時間を増やせる)
 ・インフォームドコンセント、患者さんや家族への説明、質疑応答などの補助

これらが実現できると、外来患者さんの一番の不満である長い待ち時間の改善策の一つとなりえると思います。

②大腸内視鏡検査の自動運転化
 全大腸内視鏡検査は技術的に難しく、マスターするにはかなりの訓練が必要です。内視鏡の頭に圧力センサーを付けたり、撮影画像から空間認識することで自動運転できるシステムをオリンパスと共同で進めています。誰もがベテラン医師と同様の手技を短時間で行えるようになり、もっと多くの患者さんが受けられるようになります。

emoji33内視鏡画像診断支援AI
国立がんセンターとNECはAIを用いて大腸がん及び前がん病変(腫瘍性ポリープ)を検査時にリアルタイムで発見するシステムを開発しました。発見率は98%でした。(QLifePro医療ニュース2017年7月13日配信)
昭和大学と名古屋大学も同様のシステムの開発を発表しました。(同ニュース2018年8月7日配信)
さいたま市の開業医多田智裕氏はがん研有明病院や大阪国際がんセンターと協力して開発を進めています。(m3.com2018年8月28日配信)胃のピロリ菌陽性率は99%判定でき、6mm以上の胃がんは98%拾い上げできました。検査時リアルタイムで病変部を指し示す事が可能とのことです。又、画像1枚を0.02秒という速さで読影できるのも特徴です。浦和医師会の年間4~5万人の内視鏡検査でトータル250万枚の画像を70人の専門医が1年間かけてダブルチエックしていますが、AIを用いるとわずか2時間半で可能とのことです。

検診の(スクリーニング)読影はAIに任せ、判定困難例だけ医師がみるという時代がくるかもしれません。

emoji33最終判断は医師かAIか
 
多田氏は「最終判断を下すのは医師であることは今後も変らない。」誤診が起きた時誰が責任を持つのか?-との不安にたいして、「勿論最終判断を下した医師がもつもの。」と述べています。カーナビを使っていて事故が起きたとしてもカーナビのせいではないのと同じだと。
                                                    (文責 篠原)  

Posted by みきちゃん at 15:07
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2018年09月20日

みきちゃんの医療独り言ー外来の長い待ち時間がやはり一番不満だー



みきちゃんの医療独り言ー外来の長い待ち時間がやはり一番不満だー
作家の伊集院静氏は大学病院で目の治療を受けた際外来で1時間45分も待たされた上、職員の不遜な態度に大層腹を立てたそうだ。「人間に対する扱いではない。」「こういうやり方を当たり前と考えているなら天罰が下るよ。」とまで述べている。(「週刊現代」2018年9月1日号)
私も抗癌剤治療中、予約制にもかかわらず2時間半待った経験がある。
厚労省は2017年の受療行動調査の結果を今年9月に発表した。病院外来全体では満足59.1%、ふつう30.8%、不満4.3%だった。一見不満は少ないように見える。しかし、待ち時間は満足29.0%、ふつう40.0%、不満26.3%で、不満の率は断とつ一番高かった。
「待ち時間が長いのは当たり前。」を病院側も患者側も認めて、あきらめている風に私には思える。病院が改善に向けてどれ程考え努力しているか疑問だ。
QRコード付きの整理券を渡してスマホで待ち時間がわかるシステムを試している病院があるようだ。Wifiスポットで判るようにしたり、メールで連絡する等の提案もある。しかしこれらは待ち時間を短縮する方策ではなく、待ち時間が判ることでストレスを軽減する為の一つでしかない。
当面は「かかりつけ医」を進めて病院への患者集中を減らすことしかないのだろう。
誰か名案を考えて下さい!!
                                    (文 篠原みきお)  

Posted by みきちゃん at 17:03
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2018年08月21日

がん最新情報ⅩⅩⅠ 大腸ポリープは切除した方がよいか

がん最新情報ⅩⅩⅠ 大腸ポリープは切除した方がよいか


大腸内視鏡検査を受けるとよくポリープが発見されます。大腸ポリープは腫瘍性(主として腺腫とがん)と非腫瘍性(過形成、炎症性、過誤腫性等)があります。腫瘍性はポリープの内約85%で、この内腺腫が60%近くを占めます。
この腺腫の問題は大きくなるとがん化する可能性がある事です。切除(ポリペクトミー)するかどうか、特に10mm以下の小さいものへの対応
は医療機関や医師によって異なっているのが現状です。
emoji33腺腫の大きさとがん化率
腺腫は大きいほどがんを伴う率が高い事は衆知の事実です。5mm以下では0.5%位と低いですが、10mm以上になるとかなり高率になります。

       ポリープの大きさ       がん化率 
          〉5mm          0.46%
        6~9mm          3.3%
         〈10mm         28.2%
       Sakamoto(ColorectalDis2013;15)



emoji33日本のポリープ摘除の適応に関するガイドライン
5mm以下の隆起性病変は経過観察を提案するとし、6mm以上は内視鏡的摘除の適応としています。ただし、5mm以下でも平坦で陥凹を有するものや、がんとの鑑別が困難な病変は摘除を提案するとしています。(日本消化器病学会 大腸ポリープ診療ガイドライン2014)
この日本のガイドラインは支持する確かな研究結果(エビデンス)は不足していて、エビデンスレベルはC=「低い」、推奨の強さは「弱い」になっています。世界的にも腺腫の大きさ、組織学的特徴と長期的ながん発症のリスクの関係は明確になっていません。

emoji3310mm以下でも摘除する必要ない?報告
最近米国での大規模試験の結果が報告されました。(JAMA2018.May、15)
大腸内視鏡を受けた(がんでないとされた)1万5938人を15年追跡しました。この人々を①進行した腺腫(10mm以上、高度異型腺腫、乳頭状腺腫、絨毛腺腫)、②進行していない腺腫(10mm未満で①の組織でないもの)、③腺腫なし、の3つに分けて検討しました。


結果は、①はがん発症率比、大腸がん死亡率比共高く、③と有意差がありました。②は③腺腫なしとリスクに有意差がありませんでした。10mm以下でも組織型によっては摘除しなくてもあまり心配ないという報告です。

(但し①の高度異型腺腫は外国ではがんとしない意見が多いですが、日本ではがんとする意見が多いです。従って①にはすでにがんが含まれていた可能性があります。-篠原注ー)

emoji33もし10mm近くのポリープが見つかったらどうする?
現在10mm程度のポリープ摘除術(ポリペクトミー)は比較的安全に広く行われています。簡単に取れるなら取ってしまえば気分的にすっきりしますし、この後3年に1回位の検査で良いでしょう。
但し偶発症(出血や穿孔)のリスクは0ではありません。



がんになる率は低いので10mmを超える迄経過を見る選択肢もあります。この場合は1~2年に1回の検査が必要です。
いずれを取るかは主治医の先生に、ポリープの大きさ、組織型、がんの心配が無いか等よく聞いた上で決めましょう。
                                          (文責 篠原)  

Posted by みきちゃん at 14:51
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2018年06月21日

がん最新情報ⅩⅩ 乳がん検診ーマンモグラフィーーの問題点

がん最新情報ⅩⅩ 乳がん検診ーマンモグラフィーーの問題点


現在日本の乳がん検診は40歳以上に2年に1回のマンモグラフィーを唯一推奨しています。しかし乳腺密度が高い「高濃度乳房」はがんが見つけにくいのですが、これを受診者に知らせる自治体がごく少ないことが問題視されていました。
今年3月厚労省は日本乳癌検診学会など3つの部会の意向を受けて、「一律に通知する事は時期尚早で望ましくない。」旨全国の自治体に通知しました。
この現状で受診者はどのように対処したら良いでしょうか。

emoji33高濃度乳房とは何か
乳房は主に乳腺と脂肪から成っていて、マンモグラフィーでは乳腺は白く、脂肪は黒く写ります。写り方によって「脂肪性」「乳腺散在」「不均一高濃度」「極めて高濃度」の4つに分類されます(乳房の構成)。後者2つを「高濃度乳房」といい全体が白く写ります。がんは白く写るのでこの中にまぎれて見つけ難いのです。


      (左)不均一高濃度乳房  (右)極めて高濃度乳房

emoji33日本人に高濃度乳房は多いですか? 又、年齢によって違いますか?
はっきりしたデーターはありませんが、40歳以上で約4割と推測されています。全体で5~8割との指摘があります。加齢と共に乳腺は減少し脂肪は増加しますので、高齢者程高濃度乳房は減少します。


  40歳代では60%近くが高濃度乳房だが、70歳代は15%位 
     (H26年度福井県愛知県の住民健診データーより)
なお乳房の大きさと構成は関係ありません。

emoji33どの位の自治体が受診者に通知していますか
昨年2月の読売新聞の131自治体の調査では23自治体が「高濃度で見えずらい」旨通知していました。9自治体が通知予定とし、11自治体が超音波検査を併用していました。前年の16自治体より増えていますが、まだまだ少ない状況です。静岡市静岡医師会はまだ通知をしていません。(2017年2月19日読売新聞)

emoji33超音波検査(US)の有益性はどうですか。
USではがんは黒く抜けて写るので、高濃度乳房ではむしろ発見され易いのです。


                 中央の黒いのががん
今回の厚労省の通知では「死亡率減少の科学的根拠が無い」事を理由にUSを推奨していません。(2018年5月25日読売新聞)
マンモグラフィー単独とUSを併用した検診を比較した日本での試験があります。(Lancet,2016Jan.23)2007年~2011年で40歳代の約7万2000人の試験です。マンモグラフィー単独の感度(がんの人ががんと診断される率)77%に対しUS併用群91.4%で有意に併用群で高い結果でした。USを併用する事でがんの発見率が上がることが示されています。

emoji33受診者の心構えは
厚労省は「高濃度でも追加の検査を受ける必要はない。」としながらも、症状のある人や血縁に乳がんの多い人は受診や相談を勧めています。自分の乳房の構成を知る必要性は多くの専門家や自治体担当者も認めるところです。
私は触診で受診した時に自分が高濃度乳房かどうか医師に聞くことをお勧めします。もし不安があれば有料でもUSを受けたら良いと思います。
検診が万能ではないことを肝に銘じておきましょう。
                                                                  (文責 篠原)




 




  

Posted by みきちゃん at 17:20
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2018年05月04日

がん最新情報ⅩⅨ ーロボット手術の現状と今後ー


がん最新情報ⅩⅨ ロボット手術の現状と今後

emoji33ロボット手術とは何か
米国のインテュイテイブサージカル社が開発したダヴィンチと呼ばれる装置を用いて内視鏡下手術を支援する手術をいいます。鉗子類を遠隔操作するユニット(写真左)と鉗子とカメラを備えたユニット(右)からなります。


     ダヴィンチサージカルシステム
従来の内視鏡下手術と違うのは、鉗子を曲げたり回転させたりできたり、術者の手振れを補正する機能があったりで、より細かい操作が可能です。

emoji33保険適用が一挙に拡がる
ロボット手術は2014年に「前立腺全摘出術」が、2016年に「腎部分切除術」が保険適用になっていました。
今年(2018年)4月に次の12の手術が一挙に保険適用になりました。

呼吸器分野ー肺悪性腫瘍 縦隔腫瘍(良性、悪性)
消化器分野ー食道悪性腫瘍 胃切除術 噴門側胃切除術 胃全摘術 直腸切除術
泌尿器分野ー膀胱悪性腫瘍
婦人科分野ー子宮体がん手術 膣式子宮全摘術
循環器分野ー弁形成術

emoji33ロボット手術の有益性はあるか
前立腺全摘出術は出血量や在院日数が他より少ないと報告されています(J.Endourol.2014:24)。又、断端陽性率(切除した組織断端にがんがある率)が低い、尿漏れ等の合併症が少ないデーターが示されていました。腎部分切除は断端陽性率は0%で、従来の腹腔鏡手術の1.7%より低いことが報告されました(先進医療*約100例の結果)。これらの有益性により両者にはロボット支援機加算がつきました。このこともあって前立腺全摘術はロボット手術が主流になっていますし、腎部分切除も急増しています。
胃がんのロボット手術は先進医療*として数年来15施設で臨床試験が行われてきました。ステージⅠ、Ⅱの330例の胃切除術の合併症発生率は2.45%で、従来の腹腔鏡手術の6.4%より有意に低いと報告されました。2017年に40例の胃がんロボット手術を行った藤田保険衛生大学の宇山氏は、「重度の合併症を起こすような難易度の高い手術でもロボット手術で安全にできる。」と述べています。
呼吸器分野ではロボット手術の有益性が示されていないため殆ど行われていません。婦人科分野や循環器分野も同様です。
*先進医療 医療に関わる技術料は自己負担だが検査・薬・入院料は保険が使える

emoji33今後普及するかーハードルは高い?
ダヴィンチの導入数は2017年末で280台です。(ちなみに米は2500台)導入には多額の費用がかかります。1台2~3億円しますし、鉗子類は1回30万円、保守費用は年約2500万円必要です。今回追加された12の手術には内視鏡手術と同じ点数で加算はありません。従って手術を多くするほど採算は悪くなります。
さらに、厳しい施設基準(経験医師数や年間施行数等)や、術者を養成する問題もあります。
今後急速に普及するとは考えにくい状況ですが、有益性がさらに積み重ねられてロボット手術の加算がつくようになれば普及が加速する可能性があると思われます。
                                                              (文責 篠原)




  

Posted by みきちゃん at 15:22
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2018年03月05日

がん最新情報ⅩⅧ 前立腺がん検診(PSA)は受けたほうがよいか



がん最新情報ⅩⅧ 前立腺がん検診(PSA)は受けたほうがよいか

2017年10月に日本泌尿器科学会が「前立腺がん検診ガイドライン2018年版」を出しました。これまで同様PSA検診を推奨する内容になっています。
応答集の大事な部分を中心に記しますので、受診するかどうかの参考にしていただきたいと思います。(当ブログ2016年10月投稿の「前立腺がんとPSA]もぜひご参照下さい。)

Q PSA検診の有益性は証明されていますか?
A いずれも2009年に発表された欧州の大規模なERSPC研究では死亡率が20%低下で有益としたのに対し、米のPLCO研究は有益なしとしてこれ迄賛否両論がありました。この二つの研究の新しい解析結果が最近発表されました。ERSPCで25~31%、PLCOで27~32%とほぼ同様の死亡率低下が示されました。(AnnalsofInt.Med.2017;9)

Q 日本の前立腺がんは増えていますか?
A 年々増加しています。2012年は73000人余りで男性がん4位でしたが、2016年は92600人で1位になると予測されています(国立がん研究センター)。年齢別(粗)罹患率は、45歳以下24人 /10万人に対して、75歳~79歳555人/10万人です。高齢者に圧倒的に多いがんで、高齢化が一番の原因と考えられています。
Q 検診開始年齢はいつがよいですか?
A 50歳を推奨しています。スウエーデンの研究で50歳~54歳で有意な死亡率低下が証明されています。
Q PSAがどの位の値で気をつけたり、精査を受けたらよいですか?
A 全年齢で4.0ng/mlとしています。しかしこれ以下の2950例の生検で15.2%にがんが発見された報告があります。(N.Engl.J.Med.2004;350)そこで年齢階層別カットオフ値も推奨されています。50~64歳3.0、65~69歳3.5、70歳以上4.0としています。
Q 検診は毎年受けなければいけませんか?
A PSA値が1.1~カットオフ値(前項)の場合は毎年が奨められています。1.0以下は3年に1回で良いとしています。
Q 検診で発見されたがんの予後は良いのでしょうか?
A 日本の252市町村の456613人の集計(2001年~2005年)では、限局性がん(がんが前立腺内のステージⅠ、Ⅱ期)の率は75.5~78.4%、転移がん(Ⅳ期)5.5~6.5%でした。横浜での2001年~2010年の検診発見がん524人の転移率6.1%に対して検診外発見がん1044人では17.3%と高値でした。又10年がん特異生存率は97%、86%で有意な差がありました。
Q 受診する利益と不利益は?
A 主な利益は進行がん、転移がんへの進展抑制と、死亡率が低下することです。又早期発見によって多くの治療法から侵襲性の少ない治療法の選択が可能になります。
不利益は検診で発見できないがんがあること、PSAの偽陽性があること(ERSPCではPSA上昇で生検を施行した76%にがんが検出されなかった)、不必要な生検が増加したり、過剰治療のリスクが増加すること等です。

PSAがカットオフ値以上だからといって生検を必ず受けなければならないというわけではありませんし、がんが必ず見つかるわけでもありません。生検しか確定診断の手段が無い現在、一般的な検査の普及や精度から考えると、PSAが高めで年々上昇する場合は生検を考慮した方が良いと私は思います。
大切なのは利益、不利益を考えてご自身の希望によって受診すべきか決めるということでしょう。
                                                                           (文責 篠原)

  

Posted by みきちゃん at 17:05
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